vol.07『超格安料金なのにサービス満点のアットホームな山小屋』 個別記事ページ


文・写真◎斉藤政喜 Text & Photo by Masaki Saito
イラスト◎神田めぐみ Illustration by Megumi Kanda

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『超格安料金なのにサービス満点のアットホームな山小屋』
三重県 御在所岳・日向小屋
メイン画像
ここに価値あり!

 宿泊代を知ったらぶったまげると思う。1泊2食、なんと4000円である。北アルプスの山小屋は9千円以上が相場だから、その半分以下だ。民宿として考えても、ここまで安い宿泊代はめったにないだろう。
 日向小屋は鈴鹿山脈の北部、標高1212mの御在所岳の中腹にある。関東ではあまり知られていないが、御在所岳は交通のアクセスがよく、ロープウエイもあって観光客でも山頂に立てる山でありながら、本格的な登山も楽しめる。花崗岩の奇岩や急峻な岩壁がそびえ、樹氷に覆われる冬はアイスクライミングのメッカとなる。山麓には温泉街があり、関東でいえば箱根と丹沢を合わせたような雰囲気の山である。
 そんな御在所岳の中腹にある日向小屋の外観は山小屋の趣きがなく、新興住宅のようなつくりになっている。というのも、日向小屋は2008年9月に発生したゲリラ豪雨の土石流により壊滅的被害を受けて閉鎖。ご主人の梅田浩生さんは新たに土地を造成して2013年7月に建物を新築したばかりなのである。
 明るく清潔な室内は、外観と同じく山小屋らしさがほとんどない。電気が引かれているため、リビングのテレビはBSの放送が流れているし、キッチンには大型冷蔵庫や電子レンジ、IHクッキングヒーターが並ぶ。もちろんお風呂もある。山小屋ではなく一般家庭に泊まりに来ているような気分である。常連客いわく「うちらは山小屋に泊まりに来とるなんて、思っとらんもん。・梅田さんち・に遊びに来とるだけやから」とのことだ。

 1泊2食4000円なんだから食事の内容も推して知るべし、と思われがちだが、いい意味で予想は裏切られる。メニューはその日に常連客が差し入れた食材によって異なるが、僕が泊まった日は茹でたシャコにカツオの刺身、生ハムのサラダやタケノコの味噌和え、エビと山菜の天ぷら、トロトロの茶碗蒸しといった旅館並みのメニューが食卓に並んだ。しかも梅田さんの奥さんは毎日メニューを変えている。その理由が「常連客に同じものを出すのは、はずかしくていやなのよ」とのこと。商売を度外視した食事内容なのである。
  さらに驚くことに梅田さんは「お酒はなんでもありますから好きに飲んでください」とすすめてくれるし、奥さんも「あっちの冷蔵庫には販売用の缶ビールを置いているけれど、それはお金がかかるから、こっちの冷蔵庫にある缶ビールを飲んでください。みんなが持ってきた残りだから」と言い出す。
   こんなに安くて、こんなにサービス満点でやっていけるのか? と誰もが思うはずだが、梅田夫妻はその疑問に「山小屋で儲けるつもりはありませんからね。いいんですよ。損さえしなければ」とあっさり答える。常連客に愛されるのも納得だが、常連客に限らず、初めての宿泊者も大歓迎と、梅田さんはにこやかに笑う。日向小屋は週末のみの通年営業だが、御在所岳まで足を延ばす価値はおおいにある。

日向小屋は電気が引かれているため、厨房は電気製品も多い。電子レンジや炊飯器はもちろん、コンロもIH方式。大型冷蔵庫もあって、山小屋とは思えない充実の設備だ

日向小屋は地元のヒノキを使った木造建築。入り口周辺は広い吹き抜けになっていて、開放感のある空間に仕上がっている。ヒノキの香りが漂い、心安らぐ山小屋である

食堂は20人が一斉に食事できるスペースが確保されている。食堂の奥にはテレビもあって、地デジは写らないけど、BSの放送を見ることができる。明るくて落ち着ける空間だ

2階は20畳を越えるワンルームの寝室になっている。ひとり一畳をベースにしているから、20人が泊まっても窮屈な思いをすることなく、余裕で就寝できる。新しい畳が心地いい


朝食は納豆や目玉焼き、梅干しなどの定番的和食メニュー。梅田さんの家で漬けている自家製タクアンがおいしい。前夜の残りのおかずを食べることも可能


一般的な山小屋とは違うから、できたての料理が次々にテーブルに並ぶ。メインはタケノコごはん。味つけが絶妙で、山椒の香りが食欲をそそる

DATA

宿泊データ:
1泊2食
\4,000
素泊り 
\2,500
収容人数
20人 
営業期間
毎週金、土、日曜日と祝祭日(通年営業)
連絡先
小屋直通 059-392-2188
平日は自宅まで 059-393-4776
http://hinata.skr.jp
MENU:
缶ビール350ml
\350
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