vol.005 北アルプス・高天原温泉/富山県 ~8月に登った思い出~個別記事ページ


vol.005 山懐の湯を独り占め。遠い雲の上へ
北アルプス・高天原温泉/富山県 ~8月に登った思い出~

文・写真:小澤由紀子 写真:岡野朋之 Text & Phots by Yukiko Ozawa Photo by Tomoyuki Okano


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小澤由紀子


ザ・ノース・フェイスのプレス担当。仕事でもプライベートでも、積極的な山登りを信 条とし、齢30を過ぎてからアイスクライミングの世界にも足を踏み入れている


3度目の山行でついにたどり着いた。日本でいちばん遠いところにある秘湯といわれる温泉。そこはどこから登っても2日は歩かなくては行けない北アルプス最深部にある。山の師匠から「縦走の醍醐味はテント泊、そしてひとり一装備で自立して」と教え込まれているから、荷物はゆうに20㎏を超えている。だから、それだけだってハンパなくつらい。「お前の荷物の半分は酒だろ!」という噂もあるけれど……。いーじゃん、それも大事な装備の一部だし。それに、このつらさの度合いこそ、目的地での開放度に比例するわけなんだからさ!

そう、雲ノ平への最初の2回はドシャ降りの雨だった。景色なんてほとんど見えない。さすがに憧れの秘境に行くための道のりは、そう簡単にはいかないもの。薬師沢から雲ノ平までの急登を這うように登る。さらにテン場は水浸しで、このまま黒部川の源流とともに流されてしまうんじゃないかと思うほどに。もちろん、どちらの回でも、温泉までは行けなかった。

そして3度目。8月半ばのその山行はカラリと晴れ、雲ノ平に着くとサワサワ~とやさしく揺れる緑のなかに、チングルマの果穂が一面に揺れていた。チョウが舞い、鳥が鳴いて、青空のなかに白い雲がゆったりと浮かんでいる。まさに「HEAVEN !」。頭に浮かんだのはこの一語。

次の日、念願の高天原温泉へと向かう。すがすがしい木道を過ぎると、湿度の高い深い森に入り、蒸し暑さとぬかるんだ道でドロドロになった。意外と遠いんだよね、雲ノ平から高天原温泉までって。もうすぐお風呂に入れる! その一心でひたすらに下ると、やっと開けたところに赤い屋根の、趣ある高天原山荘が見えた。

ここでビールを買ってさらに進む(こんなところまでビールを運んでくれていることに感謝。ありがとう!!!)。そして……とうとう着いたのだ! 沢のところどころに乳白色の湯がためられてきらきらと光っている。 も~、汗まみれの服を脱ぎ捨てて一目散に沢に飛び込みたい! ところだけど、ここはグッと我慢。一応、女の子だしね! 女性用に柵で囲ってある女風呂があるので安心して入ることができる。湯に浸かってビールを開ける。「プゥはぁ~、このためにここまで来たんだよぉ~」

女風呂にはほかにだれもいない。風呂場いっぱいに手足を広げて、全身を開放するのだ! 薬師沢の登りもなんのその。それはもう、長い道のりのつらさをはるかに超える開放感だった。ここは雲上の楽園。時間と体力と運(天気)と努力と、すべてがそろったときにのみ与えられる特権なのだ。

上部のメイン写真は、水晶岳の西に湧き出ずる温泉沢。その沢の一部に湯溜まりをつくり、囲っただけの野湯、それが高天原温泉。女性専用のほか、混浴の温泉もある。山人の憩いの場。

 

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念願の温泉で「プハッ〜」の真っ最中! いちおう、女の子なので、足だけネ。それにしても、この開放感。歩いた甲斐があったぁ〜

【MAP】

○富山地方鉄道富山駅→50分→富山地方鉄道有峰口駅→バス1時間15分→折立
○北陸自動車道立山IC→約2時間→折立

※この記事はPEAKS 2010年8月号 No.9に掲載されたものを再編集したものです。

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