vol.003 甲武信ヶ岳・東沢渓谷/山梨県・長野県 ~8月に登った思い出の山~個別記事ページ


vol.003 ナメ滝をスタスタ歩いて、13年間通うオレの隠れ家
甲武信ヶ岳・東沢渓谷/山梨県・長野県 ~8月に登った思い出の山~

文・写真:森山伸也 Text&Phots by Shinya Moriyama


Mpc_01_5


 


Mpc_02_5

 

森山伸也

夏は暑さと人気を避けて沢へ逃げるか、北極圏へ国外逃亡を図るフリーライター。原稿を書いているいまも家庭菜園に群がる害虫が気になる。本誌にて「森山新聞」連載中

本当はだれにも教えたくない。
まだ山登りを始めて間もないころ、大学探検部の先輩になかば強制的に連れて行かれたのが、この沢との出会いだ。それから毎年のように友だちと遊びにいくようになった。
水はけのいいランニングシューズに半袖短パンという小学生のような格好で真っ青な渓流へドボンッと飛び込む。いつも僕の夏はここからはじまる。
背中のパックにはタープと寝袋、白米、塩漬けした生肉とビールだけ。どこを寝床にしてもいい。調理に使う火は流木を燃やし、足元の水を手ですくって飲む。水の中でも河原でもどこを歩いてもいい。沢登りってなんて自由な遊びなんだろう。って、この東沢が教えてくれた。それから丹沢や奥多摩、越後の沢へ遊びに行くようになったけれど、いつもこの東沢に戻ってくる。

100年ほど前にこの東沢を歩いた登山家で英文学者の田部重治は著書の『山と渓谷』でこう書いている。
「行方を見やれば水青く、白い河原は青葉の渓に埋もれて、はてしも知れず奥へ奥へとかくれ行く。名も知れぬ花が、緑の間を綴る美わしさは、梓川の渓谷にも勝って美わしく、限りなく続く若葉のトンネルはいつまでもとも分からぬように続いている」
100年前からなんら変わらぬ自然。轟々と流れる青い清流、カラマツやシラカバなどの豊かな森、キラキラ輝く垂直に切り立った一枚岩の滝。これらのコンビネーションが絶妙に美しい。何度訪れてもほれぼれして「ひーふーー」と思わず深い深呼吸をしてしまう桃源郷のようなところだ。

じつは昨年、危うく遭難しかけた。
目の前には青空へつき上がるガレガレの沢。どうやら信州沢から枝分かれする沢を間違えたようだ。引き返すのも億劫なのでこのまま沢をさかのぼることに。北をめざせば、甲武信ヶ岳と国師ヶ岳をつなぐ稜線に出ることは明らかだ。だが不安定な岩場と生い茂る低木のおかげで全然前に進まない。「うわー!!」。パートナーが背後で悲鳴を上げた。直径約50㎝の巨岩を抱いて岩の上に横たわっている。登ろうとして手をかけた岩が落ちてきたのだ。幸いケガはなかったが、あのときのことを思うといまでもゾッとする。ヤブをこぎ、稜線に出たころにはあたりはすっかり暗くなっていた。

整備された登山道でないだけに歩行時間が読めず、あらゆるリスクが見え隠れする沢登り。しかし、沢の淵にダイブして火照った体を冷やしたり、流木を燃して肉を焼いて食ったり、ビールを清流で冷やしてゴクリ。なんてことをやっているとたちまち沢から離れられない体になってしまった。

 

Mpc_03_01_3

 

1)垂直に近い一枚岩の上を雨水が流れ、美しい滝を作る。こんな風景がいたるところに点在している東沢渓谷は奥秩父の楽園だ

【MAP】

○JR中央線塩山駅→バス1時間→西沢渓谷入口→毛木平→タクシー30分→JR小海線信濃川上
○中央自動車道勝沼IC→約45分→西沢渓谷入口→毛木平→約90分→中央自動車道長坂IC

※この記事はPEAKS 2010年8月号 No.9に掲載されたものを再編集したものです。

PEAKS山大学×Canon パワーショットG3 X 体感イベント

【月刊】 PEAKS(ピークス) 新刊

  • 雑誌「PEAKS[ピークス]」No.99 PEAKS 2018年2月号 特集「山で遭難しないための緊急対応スキル」

    1,000円(税込)
    2018年1月15日発売

PEAKS(ピークス) 関連動画

PEAKS(ピークス) 関連本

  • PEAKS関連本 PEAKS特別編集
    WHITE MOUNTAIN 2018

    ¥1,620(税込)
    2017年11月28日発売
    PEAKS関連本 PEAKS特別編集
    日帰りで登る日本アルプス詳細ルートガイド

    ¥1,404(税込)
    2017年10月2日発売
    PEAKS関連本 PEAKS特別編集
    最新版 八ヶ岳トレッキングガイド

    ¥1,296(税込)
    2017年08月29日発売

アーカイブ

編集部スタッフ紹介

Peaks Facebook

peaks twitter