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2009年5月

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2006年8月11日 (金)

Vol.310 8月11日 ナナハンなのにコーナリング・マシンという衝撃

それまでの4スト・レーサーのイメージを覆す
コンパクトで軽快、そしてコーナーを躊躇なく攻められた
パンタレーシング。
ほとんどメーカーからの出荷状態に
足まわりのセットアップくらいで臨んだ鈴鹿8耐では
それまで耐久性など信頼性に不安を囁かれていた面を
一気に吹き飛ばす見事な完走でゴールを飾ることができました。
僅か600ccの空冷ツインで、
ストレートこそ4気筒勢に引き離されてましたが、
コーナリングではワークスマシンを除けばむしろ優位という
走り甲斐のあるハンドリングは楽しかった……。

750f1 その2年後、経営の危機を噂されていたドゥカティが
600ccを750ccまで拡大した750F1をデビューさせたのです。
シャシーはパンタレーシングとほぼ同じで、
デイトナではM.ルッキネリのライディングで
そのポテンシャルの高さを立証。
日本上陸を果たした実車の初試乗は何とも衝撃的でした。
灯火類を装備して、カウリングも量産の樹脂製と
重量がパンタレーシングより嵩んだ分、
やや軽快性が減ってはいましたが
当時の国産ビッグバイクとは比較にならない軽やかさで
何よりコーナリングを楽しむためのバイクという、
ナナハンの概念を吹き飛ばすハンドリングに狂喜しっぱなし。
それまではナナハンといえば
ブレーキングを終えてからおもむろにバンクして、
旋回状態に落ち着いてからコーナーの醍醐味を感じるという
連続動作など考える余地もない走りだったからです。
250〜400ccのレーサーレプリカが流行り、
コーナリングの楽しさを多くのライダーが覚えた頃だっただけに
ドカのF1デビューのニュースは
瞬く間に走り屋ライダーの注目を浴び
それまでのドゥカティとしては例のない
引っ張りダコの販売量を記録。
ただ1点、ライディングの難しさを残していたのです。
それはタイヤの問題。
何せ当時のナナハンやそれを上回るビッグバイクは、
200キロ以上のトップスピードに耐えるよう
毎年のように車体剛性をアップしていて
車重も装備重量で軽く250kgを超えるモノばかり。
これに見合うタイヤは速度レンジの上昇と共に当然剛性も強く
50kg以上も軽いF1とは相性が合いませんでした。
現在のようにラジアル構造で、
300km/hが可能なバイクに装着するタイヤでも
軽くしなやかな特性が得られなかった当時、
直立からリーンしていくそのプロセスで
ライダーを不安にする過渡特性の悪さが禍して
コーナリングマシンと言ったって乗りにくいじゃないか……
そんな風評があったのも事実。
そこはバイクの重心とライダーとの位置関係でクリアできるのですが、
ライディングテクニックなどまだ語られはじめたばかりの時代だっただけに
悩むばかりのライダーも数多く存在してました。
「孤高のマシン、ドゥカティ」
そんなイメージが徐々に定着してましたネ。
でも、だから奥が深い、面白い、
ボクはそう言い続けてました。
そんなF1にさすがに業を煮やしたのか、
モンジュイなど後期のモデルでは
軽くしなやかなレーシングタイヤの
レインタイヤを工場出荷時に装着するなどという荒技に
さすがのボクも評価に困った記憶があります。
だって何回ツーリングに行けるんだろうというほど
瞬く間に摩耗するし、
減ったからと交換するにも簡単には手に入らないんですから。
そしてようやくラジアルタイヤの実用化の波が押し寄せた頃には、
F1も750Sや新しい900SSへと世代交替していました。
そんなどこか儚い面も
パンタ750 F1の思い出のひとつ。
というわけで、週末は岡山で万感を味わって来ようと思ってます。

根本健

  • 1948年東京生まれ。小学生から鉄道に飛行機と、オタク街道まっしぐらだったのがナゼかバイクの道へ。ロードレースに憧れ'73年全日本チャンピオン。'75~'78年に世界GPにチャレンジ。帰国後ライダースクラブ編集長となり28年間雑誌づくり人生。最近はビンテージバイクにもハマり、レースやツーリングに楽しみを広げている。

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