大久保慈

  • おおくぼ・めぐみ
    建築家。1974年生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。2000年よりヘルシンキ工科大学建築学科。2002年よりR-H Laakso,JKMM他フィンランドの建築設計事務所勤務。北欧スタイル他、寄稿多数。

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2009年10月

2009年10月20日 (火)

アーバン・ドリーム



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   日本人が海外のものに興味があるように、フィンランド人も海外のことには興味津々。日本のこともポップ文化から伝統文化、政治、経済、産業となにかと話題。このあいだはとげ抜き地蔵のことが新聞に載っていた。

   そしてこちらの建築家が日本に出かけて、東京の街などをみて驚くのは店舗やレストラン、居酒屋がなんだか“アパート状”になっていることで、建物の下から上まで階ごとに違った店が入る、いわゆる雑居ビルのようなものが珍しいという。ヘルシンキではデパートやショッピング・モール以外の店舗は1階が常識。上層階はオフィスか住宅だ。こちらでは都市計画で用途も決まってくるので、例外はほとんどないと思う。

   ヘルシンキの中心部から港を移転する計画がある。工業施設を中心部から移転させることで海岸沿いをもっと市民が使う場にしましょうという方針の一貫だ。で、今は更地になっている港の土地は先日マドンナが8万人のコンサートを行ったばかり。そんな港湾再開発の一部を外国人都市計画家や有識者にエコな街とはというようなアイディア・コンペを依頼したところ、全ての案で提案されたのは、土地利用を過密にして自家用車での移動を減らそうということ。中には80階建てくらいの超高層ビルを提案した案もあった。なにやら巨大都市のようなアーバン・スペース。

   でも、少し疑問に思うのはヘルシンキの都市の価値。特別に高層な建物がない、調和のとれた景観。緑豊かなライフスタイルと夏のあいだなどは電灯をつけなくて済むくらい明るい住宅。“路面店”の保育園。公園から聞こえてくる子どもたちの声は元気だし、仕事から帰って近所の森へ散歩しに出かけるのはフィンランド人の国民的趣味のようなものだと思う。建物の陰に遮られることない太陽光の有効利用は確かに都市計画の教科書に載っていたはずなのだけれど。

   写真はノルディック・クラシシズムから機能主義に移り変わる時期のとてもエレガントな傑作、ヘルシンキ市立アート・ギャラリー。それからその広告。今年で80歳の建物だ。


2009年10月17日 (土)

ムース




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   じつはムース(エルク、オオジカ)を見たことがない。フィンランドでは狩猟期間がたけなわ。狩猟期には今年は5千頭のムースが狩猟許可の対象になって、それによって大繁殖とムース衝突と呼ばれる危険な交通事故を減らしているのだとか。森を歩けばムースの落とし物(はっきり書くと糞)にお目にかかるし、道路にはムース注意の道路交通標識もよく見かける。先日は私がスカイダイビングをしているハンコの空港にも出没したのだとか。700kg程度の巨体と大きな鼻、雄なら大きな角が魅力的だ。

   でも実物を見たことがないし、ぜひともお目にかかりたいと動物園に通ってみたこともある。でもちょうど柵の修理中だったりして、そのうちヘルシンキの動物園はムースを飼うのを止めてしまったのだ。

   そんなこんなで諦めかけていた矢先、ムースを飼うレストランが動物園としての登録を済ませたというニュースが新聞に載っていた。まだはじめたばかりなので、ムースは2頭。雌のアンニッキと雄のマッティ・エスコの2頭しかいないのだそうだ。でも素敵。ぜひとも行ってみたいと思っている。ホームページはこちら

2009年10月15日 (木)

サーメ人の誇り?

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   先日はなにやらデザイン・フォーラムから招待状をいただいて展覧会のオープニングに出かけてきた。なにやらラップランドにあるサーメ文化博物館の主催で国内外のデザイナー達にサーメ人の伝統的なナイフをデザインしてもらったのだとか。ちょうどクリスマスの話を記事に書いたところだったので、そして寒くなってきたので、なにやらクリスマス気分。とはいえまだまだ10月、浮かれた気分の油断は禁物。

   デンマーク、スウェーデン、オランダ、フランスなどからも出展していたし、イギリスのジャスパー・モリスン、日本からも内田繁や深沢直人。フィンランドからはハッリ・コスキネンをはじめとする蒼々たる顔ぶれだ。ナイフという道具。それも色濃い伝統的なカタチがありながら、現代のカタチに還元するということ。難しい課題だったかと思う。ビッグ・ネームの割になんだか冴えないものもあったし、さすがと思わせる素敵なものもあった。展示は入場無料。11月29日まで。デザイン・フォーラムで。

2009年10月14日 (水)

冬支度



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   紅葉が街にも美しい彩りを添えている。急に寒くなってきたと思ったら昨日は初雪が降った。うちの亀は冬眠してしまってめったに起きてこないのでなんだかつまらないし。公園のウサギたちは雪が多かった去年、さんざん木の皮をかじっても食料不足でその多くが冬を越せなかったのだとか。そのせいか、ものすごい勢いで草を食べているウサギ達はとても忙しそうに見えて、なんだか自分まで忙しいような気になって気が急いてしまう。冬のフィンランドで困るのは太陽光が足りないこと。なんだか日中でも暗いし、なんといっても屋外での写真が撮れなくて困る。なのでウサギやら亀やらの冬支度ではないけれど、片手間に写真の撮り貯めをしている。これから書こうとしていること、多分書く可能性のあること。 葉の落ちた木は邪魔にならないし、今ならまだ秋の太陽光もある。建物を撮り貯める。なんだか忙しい気がする冬支度。

2009年10月 4日 (日)

華の道は……


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   久しぶりに花を買ってみた。というのも少し前にお母様が亡くなったという友人が、残ったお父様が一人で暮らすには家が大きすぎるとかで家財を処分していた。そこで譲り受けたのがアールトの花瓶とアラビアの60年代の陶器の花瓶。アールトの背の高い花瓶は前から欲しかったものなので、花を生けて試してみたかったのだ。でもアールト花瓶の生け花は困難極まる。花を、植物をダイナミックに見せる勅使河原宏はやっぱりすごいななどと感心。

   フィンランド人にとってインテリアを飾ることは女性のたしなみのようなものだろうか。最近は男性もインテリアに興味があると言ってはばからない人も多いけれど、私の年代の人たちの親の世代は特にインテリア・デザインの全盛期みたいなものだし、その世代の女性はガラス器やら陶器やらを収集していた人が多いように思う。手に届く値段で、そして使える。自分の子ども達や孫にでも残してあげられるような価値のあるものだし、そのうち価値も上がるだろうしという部分もあったのではないかと思う。個人的には美しいガラスはいくら眺めてみても飽きない。手仕事の技が作り出す美だ。

   ところで、かの友人の母君も収集した数々の名器を息子に、そして息子の嫁にでも相続させたかったのではないかという疑問が残る。彼は独り者だし、機会を見つけて暖かい国へ移住したい。なんでこんなにたくさん似たようなガラス器や陶器ばかり買い込んだのだろう……というタイプ。アールトの花瓶だけでも十は下らないし、もう作られていないタピオ・ヴィルッカラの作品も多数。普通の住宅や、特に都市部のアパートには入りきれないのは当然のこと。でも母君の気持ちを想像すると少し申し訳なくも思う。「値段は自分の気持ちで払ってくれればいいよ。アールトのは10ユーロくらいかな。」などと言う友人に市場相場よりも安めの値段ではあるけれど、古物商より多め、それなりの額を無理矢理に渡した。そして、とても大切にしようと思う。