大久保慈

  • おおくぼ・めぐみ
    建築家。1974年生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。2000年よりヘルシンキ工科大学建築学科。2002年よりR-H Laakso,JKMM他フィンランドの建築設計事務所勤務。北欧スタイル他、寄稿多数。

北欧デザインツアー

  • ≪ツアー報告公開中≫

    第2弾!北欧ツアー報告公開中


2009年12月

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2009年12月21日 (月)

ミステリー・クリスマス

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もうひとつ、クリスマスのイベントの話。先日出かけていったのは、オペラ。誕生日プレゼントにと、友人であるデザイナーのゲイ・カップルが招待してくれたのだ。彼らの趣味からして、なにやらとてもアートなイベント。


北方古典主義のアレクサンテリン・テアッテリはその昔、パリなどの華やいだ都市文化に憧れを抱いた時代の産物。ピンクの外壁に石畳のエントランス。とてもこじんまりしたスケール感がエントランス・ホールを心地よい空間に仕上げている。そして劇場空間は高い天井とロマンチックでかわいらしい、まるでおとぎ話の世界に出てくるような装飾がとても魅力的だ。劇場という建物がそれだけでとても素敵な演出をなしているのだ。


肝心のオペラ。エドガー・アラン・ポーのミステリーが原作。とてもモダンでシンプルな演出は余分なものを全て取り去った、ミニマリズムの境地。それ故に、たった5人の出演者の立ち位置から、ほぼ白黒のクラッシックな服装、音楽の強弱と調和が物語の恐怖を否応無しに引き立てるのだ。音楽はフィリップ・グラス。とても凝った、実験的な意欲作であったと思う。


最後の場面で女性が男性に飛びかかって殺してしまった……。びっくり。ショック。そこでゲイ・カップルの「誕生日おめでとうぅー。」の声。ほぼショック死。


2009年12月18日 (金)

サーカス

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   12月はクリスマスを控えて、プレ(ミニ?)・クリスマスという意味合いのピック・ヨウルの時期。本番はおとなしく帰省して家族や親戚とすごすのがこちらの習わし。なのでその前に友人たちや職場の仲間と一緒にしっかり騒いでおこうというのが(?!)ピック・ヨウルだ。この時期はビジネスの接待も増えるし、人気のレストランは昼も夜もずいぶんと前から予約でいっぱいになるのだとか。劇団やオペラなどもクリスマスを意識したプログラムを用意している。


 私もいちおうクライアントの担当者とお昼を食べにいって、「今年はどうもお世話になりました。」と言ってきたし、友人たちとのプレ・クリスマスも楽しんだ。中でもとても楽しかったのが、冬のサーカス、HURJA RUUTHだ。もともとノキアのケーブル工場であった産業施設の面影ののこる空間。多くても300人くらいしか入れない小さな劇場は出演者との距離の近さが魅力。目の前で、美しい演出と素朴な舞台装置に、思わず息をのむようなショー。10人程度の出演者のみで動物はなし。それでも始まりから、最後の瞬間まで観客を惹き付け、魅了する。


 毎年早い時期にチケットが完売してしまうのだとか。私は友人が10月ごろにチケットを予約しておいてくれたので、すっかり忘れてしまっていて、驚きの楽しみだった。


2009年12月16日 (水)

師走のヘルシンキ


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   フィンランドには師走という言葉はないけれど、クリスマスを控えたこの時期は毎年のことながら忙しくしている。この時期には異例なほどに気温が下がって、数日前にはラップランドでは零下34度を記録したのだとか。ヘルシンキでも零下815度くらい。雪も氷もきゅっと引き締まって、歩くたびにギュウギュウと音がする。水分の多い雪と違って滑りにくいし、冷たく澄んだ空気になんだか気分もぎゅっと引き締まる。普段ならこの時期のヘルシンキは重たく厚い雲に覆われているのだけれど、これだけ寒いとほぼ晴天。日が短いのは仕方がないけれど、少しでも太陽光が見えるのはとても気分が良いのだ。


   私自身は前回のブログで書いた通り、学校を卒業することにして、卒業した。今年ずうっと設計していた、オフィスの空間デザインの仕事も現場の最終検査に行ってきた。ここのところ書き物をしている。


   ちなみに1枚目の写真は私のデザインしたオフィスの会議室。1年中クリスマスの部屋。そして2枚目は毎年恒例となりはじめた、エスプラナーディのクリスマス・マーケット。




2009年11月28日 (土)

世代交代?



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   さて日本でも数年前に国立大学の民営化が行われたけれど、こちらも大学改革の真最中。フィンランドの高等教育はとても実践的で、昔から実務ができる人間を育てることに重点が置かれていたし、産学連携が進んでいた。私の母校であるヘルシンキ工科大学はその産業界との提携においては世界でも稼ぎ頭といっても良いと思う。教育のことはあちらこちらに書いてきた。

   フィンランド語では大学は直訳すると高等学院といったような名前が付けられているし、職業高等学校とは線引きがされていた。でもいままで学部と修士を合わせてディプロマとしていたのを、EUなどの影響もあって、学部と修士に分けることになった。そして職業高等学校を卒業していれば、もしくは外国の学部を卒業していれば修士だけでも学べるようになるらしい。

   さんざん反対した建築学科も結局は国の方針に従うことになった。学部のユニークな授業、法規や都市計画、職業研修などの必修をなくしてフィンランド建築家が誕生する日が来るのらしい。ヘルシンキ工科大学自体が経済大学、工芸大学と統合して巨大な大学が誕生する。もう来年の1月からだ。大学の 新しい名前はアールト大学なのだとか。仕事仕事といって、卒業せずに学生の身分を保っていたけれど、先行き不安なのとヘルシンキ工科大学に愛着があるので、統合前に大学を卒業することにした。


2009年11月27日 (金)

逃亡派



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   このブログでも何度か書いているけれど、ヘルシンキに棲む街ウサギたちのこと。もともとは誰かが捨てたペットのウサギ達だけれど、野うさぎの血が混じってこの国の厳寒の気候にも耐えられるようになったのだとか。でもいくら寒さに耐えても、地面も草も深い雪と氷に閉ざされてしまった去年は食物不足。街の花壇から公園の木から、ウサギの歯跡が街の至るところに残されたのだ。

   じつはヘルシンキの緑地にある木々は平均して1本につき3000ユーロ程度のメンテナンス費用がかかるのだとか。それは人づてに聞いた話なのでどういう計算なのだかよくわからないのだけれど、確かに公園整備の人たちは来るし、枝おろしやら、枯れた木の植替えなどもよくやっている。という訳でウサギに木の根を提供するほどの余裕も無いみたい。

   実家でウサギを飼っていたというよりもウサギと同居していた私にとってはあまり聞きたくない話なのだけれど、ヘルシンキ市はウサギ達の数を減らすために捕獲しているのだとか。かなりの数だ。数千匹。でも今年から捕獲されたウサギは冷凍保存して、コルケアサーリ動物園のライオンやら虎といった肉食獣達のエサにすることになったのだとか。ライオン達も喜んでいるとかで、とても良い話だと言う賛同の声が多数だけれど、なんだか複雑。近所でウサギ達を見かけるとついつい、「捕まりそうになったらしっかり逃げるのだよ。」と心の中で思う。


2009年11月25日 (水)

謎の穴



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   なにやら忙しくしていたのでブログが1ヶ月以上も飛んでしまった。冬の足音が聞こえて、クリスマスの飾り付けが始まった街の雑踏も、なにやらせわしさを増してきた。そんなわけで新聞も読みはぐれて積んであるし、最近のニュースには少し遅れを取ってしまった。

   少し古いニュースになるけれど、ヘルシンキ中央駅の前あたりで地下の水道管から水漏れがあったのだとか。誰が開けたのだかわからないという、なんとも不可思議な穴がみつかったりしたけれど、どうやら何かの工事ミスだと思う。重機で開けた穴だし、たぶん間違えて開けてしまった人は自分が開けたのだと言い出せなくなってしまったのだと思う。結局地下鉄の駅が水没してしまって、水圧でエレベーターも全壊。地下鉄の「ヘルシンキ駅」の駅は来年の1月頃まで閉鎖なのだとか。観光にいらっしゃる方々はご注意を。


2009年10月20日 (火)

アーバン・ドリーム



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   日本人が海外のものに興味があるように、フィンランド人も海外のことには興味津々。日本のこともポップ文化から伝統文化、政治、経済、産業となにかと話題。このあいだはとげ抜き地蔵のことが新聞に載っていた。

   そしてこちらの建築家が日本に出かけて、東京の街などをみて驚くのは店舗やレストラン、居酒屋がなんだか“アパート状”になっていることで、建物の下から上まで階ごとに違った店が入る、いわゆる雑居ビルのようなものが珍しいという。ヘルシンキではデパートやショッピング・モール以外の店舗は1階が常識。上層階はオフィスか住宅だ。こちらでは都市計画で用途も決まってくるので、例外はほとんどないと思う。

   ヘルシンキの中心部から港を移転する計画がある。工業施設を中心部から移転させることで海岸沿いをもっと市民が使う場にしましょうという方針の一貫だ。で、今は更地になっている港の土地は先日マドンナが8万人のコンサートを行ったばかり。そんな港湾再開発の一部を外国人都市計画家や有識者にエコな街とはというようなアイディア・コンペを依頼したところ、全ての案で提案されたのは、土地利用を過密にして自家用車での移動を減らそうということ。中には80階建てくらいの超高層ビルを提案した案もあった。なにやら巨大都市のようなアーバン・スペース。

   でも、少し疑問に思うのはヘルシンキの都市の価値。特別に高層な建物がない、調和のとれた景観。緑豊かなライフスタイルと夏のあいだなどは電灯をつけなくて済むくらい明るい住宅。“路面店”の保育園。公園から聞こえてくる子どもたちの声は元気だし、仕事から帰って近所の森へ散歩しに出かけるのはフィンランド人の国民的趣味のようなものだと思う。建物の陰に遮られることない太陽光の有効利用は確かに都市計画の教科書に載っていたはずなのだけれど。

   写真はノルディック・クラシシズムから機能主義に移り変わる時期のとてもエレガントな傑作、ヘルシンキ市立アート・ギャラリー。それからその広告。今年で80歳の建物だ。


2009年10月17日 (土)

ムース




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   じつはムース(エルク、オオジカ)を見たことがない。フィンランドでは狩猟期間がたけなわ。狩猟期には今年は5千頭のムースが狩猟許可の対象になって、それによって大繁殖とムース衝突と呼ばれる危険な交通事故を減らしているのだとか。森を歩けばムースの落とし物(はっきり書くと糞)にお目にかかるし、道路にはムース注意の道路交通標識もよく見かける。先日は私がスカイダイビングをしているハンコの空港にも出没したのだとか。700kg程度の巨体と大きな鼻、雄なら大きな角が魅力的だ。

   でも実物を見たことがないし、ぜひともお目にかかりたいと動物園に通ってみたこともある。でもちょうど柵の修理中だったりして、そのうちヘルシンキの動物園はムースを飼うのを止めてしまったのだ。

   そんなこんなで諦めかけていた矢先、ムースを飼うレストランが動物園としての登録を済ませたというニュースが新聞に載っていた。まだはじめたばかりなので、ムースは2頭。雌のアンニッキと雄のマッティ・エスコの2頭しかいないのだそうだ。でも素敵。ぜひとも行ってみたいと思っている。ホームページはこちら

2009年10月15日 (木)

サーメ人の誇り?

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   先日はなにやらデザイン・フォーラムから招待状をいただいて展覧会のオープニングに出かけてきた。なにやらラップランドにあるサーメ文化博物館の主催で国内外のデザイナー達にサーメ人の伝統的なナイフをデザインしてもらったのだとか。ちょうどクリスマスの話を記事に書いたところだったので、そして寒くなってきたので、なにやらクリスマス気分。とはいえまだまだ10月、浮かれた気分の油断は禁物。

   デンマーク、スウェーデン、オランダ、フランスなどからも出展していたし、イギリスのジャスパー・モリスン、日本からも内田繁や深沢直人。フィンランドからはハッリ・コスキネンをはじめとする蒼々たる顔ぶれだ。ナイフという道具。それも色濃い伝統的なカタチがありながら、現代のカタチに還元するということ。難しい課題だったかと思う。ビッグ・ネームの割になんだか冴えないものもあったし、さすがと思わせる素敵なものもあった。展示は入場無料。11月29日まで。デザイン・フォーラムで。

2009年10月14日 (水)

冬支度



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   紅葉が街にも美しい彩りを添えている。急に寒くなってきたと思ったら昨日は初雪が降った。うちの亀は冬眠してしまってめったに起きてこないのでなんだかつまらないし。公園のウサギたちは雪が多かった去年、さんざん木の皮をかじっても食料不足でその多くが冬を越せなかったのだとか。そのせいか、ものすごい勢いで草を食べているウサギ達はとても忙しそうに見えて、なんだか自分まで忙しいような気になって気が急いてしまう。冬のフィンランドで困るのは太陽光が足りないこと。なんだか日中でも暗いし、なんといっても屋外での写真が撮れなくて困る。なのでウサギやら亀やらの冬支度ではないけれど、片手間に写真の撮り貯めをしている。これから書こうとしていること、多分書く可能性のあること。 葉の落ちた木は邪魔にならないし、今ならまだ秋の太陽光もある。建物を撮り貯める。なんだか忙しい気がする冬支度。