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2019年1月 9日 (水)

フィルムケーススピーカーのチープな音に癒される夜もある

バード電子の斉藤社長から、怪しげなパッケージが送られて来た。お年賀だろうか。

実はバード電子さんと、私の実家は近くて、そういえば年末もPFUの松本部長と飲んだくれて、斉藤さんの近くの店で盛り上がった気がする。あまりに酔っぱらって、よく覚えていないが(笑)

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パッケージを明けてみると、フィルムケースを使ったスピーカーが出てきた。

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2004年にMAGISONの名で販売されたフィルムケーススピーカーのリメイクだという。今回の商品名はEZISON7。価格は3700円(税別)で、フィルムケース部分は白いのと黒いのがある。

バード電子 EZISON7
https://shop.bird-electron.co.jp/?pid=138623737

アップル製品やPFU製品の周辺機器として、怪しくも便利で、かつ、めっちゃ少数しか売れなさそうな商品を黙々と作るバード電子だが、これまたどう扱っていいか分からない商品だ。なにしろ、フィルムケースを反響室にしてスピーカーとしているんだから、たいした音が出るわけでもないと思う。記事書きにくい商品だなぁ……なんて思いながら写真を撮ってしまうのがブロガーの性(笑)

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それにしても、僕にフィルムケースを送り付けてくるとは。

雑誌屋である僕は、フィルムケースとは因縁が深い。

そもそも26年と半年前、関西から東京のバイク雑誌に出てきた僕の最初の仕事は、カメラマンさんの撮ってきたフィルムを編集部から、現像所に持って行き、現像が上がったら取りに行くことだった。バイク雑誌だから、当然日常の足はバイクだった。最初はGSX-R1100に乗ってたし、途中から編集部のM900を担当するようにもなったし、編集部に来ていたいろいろなメーカーさんの試乗車に乗せてもらえるようになった。

シャッターを押したらデジタルデータの写真が仕上がっている今からは、想像もつかないが、ロケ終わりのフィルムを夜間ポストに持ち込み、仕上がったら取りに行き……往復するだけで小一時間はかかるから右往左往しているうちに1日は終わった。当時はどんな夜中であれ、早朝であれ、文句を言うことは許されなかった。

時には日本に1台しかないバイクの走行写真だったり、極秘で編集部に運び込まれたGPマシンのスタジオ写真だったり、アメリカやヨーロッパの試乗会に行って撮ってきたスクープ写真だったりしたから、若造の仕事とはいえ『万一』は許されなかった。減感、増感の指示を聞き違えたり、手違いがあったりすると容赦なくブン殴られたりすることさえあった時代だ。

ラジコン飛行機の本を作っていた頃は、長期間の世界選手権の取材などにギャラの高いカメラマンを連れていったりできなかったので、自分で撮影するようになった。EOS 3のモードラ付きに、300mm F4を付け、ポーランドやフランスの青空にラジコン飛行機の演技を追ったものだ。スイスにラジコングライダーを撮影に行ったり、フロリダのジェット機のラジコンのイベントの取材に行った事もある。そういう時は、モードラでバンバン撮るから、60本とか、80本とかのフィルムを持っていっていた。いい時代だ。今考えると、フィルム代とか、現像代とかだって大変な金額になる。しかし、当時はクオリティのためにはそんなもの屁でもなかったのだ。

このフィルムケーススピーカーは白と黒があるというが、白い方はたぶん富士フイルムの、黒いほうはコダックのケースだ。ラジコン飛行機はフジのプロビアで撮ってた。空の青がよく映えるのだ。バイクはコダクローム。金属色が美しく出る。実効感度の低いKRで、冬のバイクの走りを撮ってもらうのはむちゃくちゃ難しかった。実効感度50、走りを撮るとなるとシャッタースピードは1/125か1/250だったと思う。となると、絞りは開かねばならず、ピントは紙のように薄い。それをマニュアルフォーカスで撮っていたのだから、当時のモータースポーツ系のカメラマンの腕は本当に神業だった。

おっと、ついつい昔話をしてしまった。

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もう僕のiPhoneにも、iPad Proにもヘッドフォンジャックはないから、MacBook Proに繋いで音を鳴らしてみている。

正直いわゆる『いい音』ではない。たとえるなら昔の安い小さなラジカセのような安っぽい音だ。

しかし、思えば最近のiTunesが奏でるデジタルのカッチリした音ではなく、微妙なアナログ感がある。なるほど、斉藤さんはこれが気に入ってるんだなと思う。

思えば、いま、つい昔話をしてしまったのも、この音のせいかもしれない。

チープなフィルムケーススピーカーから、古いポップスを流すと即席のタイムマシンの出来上がりだ。

物好きな方。お試しあれ。

(村上タクタ)


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  • 村上タクタ

    村上琢太。ガジェット好きの雑誌屋。'92年入社以来趣味誌ひと筋。バイク雑誌RIDERS CLUBから、現在はコーラルフィッシュRCエアワールドの編集長も務める。機能を突き詰めてカッコよくなったガジェットと、アイデアと楽しさに満ちたウェブサービスを紹介する本『フリック!』の編集活動に奮闘中。twitterアカウントは@flick_mag

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