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2017年11月15日 (水)

世の中を変えるかもしれないエネルギー技術を秘めたMATRIX PowerWatch

『電源はあなた?』というキャッチフレーズのついた、非公開の発表会が都内某所のビルの上で行われた。

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『MATRIX』という名前からして、もしかして、僕らはネバネバした液に包まれて、繭のようなカプセルの中でエネルギー源にされてしまうディストピア的な新製品なのか……と思ったら、そうではないらしい(当たり前です)。

やっぱり語源はマトリックスの世界が人体からエネルギーを得ていたことに由来するらしいが、同社が開発しているのはゼーベック効果を利用した『温度差』で発電するデバイス。温度差さえあればエネルギーを産み出すことができるが、この第一弾のPowerWatchでは周囲の温度と、時計が触れている腕との温度差で発電して、動作するという。

ちなみにここで発電できるのは、最大(たとえば、寒い日にユーザーが走るとかして温度差を高めれば)で0.5mWぐらいなので、消費電力の少ない液晶(シャープ製らしい)など、省電力パーツを組み合わせて作られている。

ちなみに、下の写真でいえば、人体が32度、時計のケースの温度が30度となっており、そのわずかな温度差を使って発電しているのだそうだ。

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時計機能はもちろんのこと、ストップウォッチ、消費カロリーや活動量、睡眠の計測が可能。また上位モデルのPowerWatch Xはスマホの通知も受け取れることのこと。

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熱をエネルギー源とする時計だけに、カロリー(熱量)の計測については、従来のウェアラブルデバイスやスマートウォッチよりかなり正確とのこと。また、それらのデータは当然のことながらiOSデバイスやAndroidなどのスマホでも参照できる。

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このMATRIX PowerWatchは、クラウドファンディングのIndiegogoで164万ドル(約1億8600万円)ものバックを集めたという。現在はまだバックオーダーをこなしている途中とのことだが、50m防水で、フチがシルバーのタイプが169ドル、黒が199ドル、そして200m防水で、通知機能がついたPowerWatch Xが249ドルだという。

今回取材に対応してくれたのは創業者のふたり現在CEOのアクラム(中央・Akram Boukai, PhD)さん、CTOのダグラス(左・Douglas Tham, PhD)さんと、日本びいきの広報のニコルさん。

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興味深いのは、彼らがフォーカスしているのは、時計ではなく、このゼーベック効果を活かした発電の活用であるというところだろう。

たとえば、人体全体の熱を活用すると100W、懸命に走ったりすると1000Wぐらいのエネルギーが得られるらしい。アンダーウェアのような構造で、身体の多くの部分から発電すれば、充電しなくてもいいスマホやさまざまなウェアラブルデバイスも作れるかもしれない。熱量の多くは頭部から発生するということなので、ヘッドフォン、VRゴーグル、などにも使えるかもしれない。給電が不要になるという意味では、体内に埋め込む(と温度差は得難いのかもしれないが)ペースメーカーとかにも向いているかもしれない。

もっとマクロで見ると、熱を発するあらゆるところに使えるわけで、これまで無駄に大気中に放出していた、内燃機関の熱なども余すところなくエネルギーにできる。ここからエネルギーを引き出せれば、地球温暖化に対する効率化としても意味が大きいだろう。

また、このゼーベック効果は逆方向にも使える……つまり、電力をかけると熱の差を発生するのだそうで、この素材を応用した建材ができれば、電気をかけると冷える壁……というようなものも実現可能らしい。ソーラーパネルと一緒に使えば、日中はソーラーパネルの電力をゼーベック効果に使い室内を冷却し、夜は逆に暖を取りながら発電する……ということもできそうだ。

時計としてももちろん興味深いのだが、世界のエネルギー事情を変えるテクノロジーの最初の一歩としても注目すべきデバイスだ。



(村上タクタ)

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  • 村上タクタ

    村上琢太。ガジェット好きの雑誌屋。'92年入社以来趣味誌ひと筋。バイク雑誌RIDERS CLUBから、現在はコーラルフィッシュRCエアワールドの編集長も務める。機能を突き詰めてカッコよくなったガジェットと、アイデアと楽しさに満ちたウェブサービスを紹介する本『フリック!』の編集活動に奮闘中。twitterアカウントは@flick_mag

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