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2016年4月28日 (木)

ダイソンのヘアドライヤー『dyson supersonic』がスゴい理由 #dysonjp

ご存じのように、ダイソンは技術に特化した会社だ。テーマを見つけ、数多くの技術的なアプローチを試み、数多くの試作とトライの中から、有効なものを選び出し、さらに多くのテストを行い、製品化するという科学的アプローチを軸として行動する。

そのダイソンから、『dyson supersonic』というヘアドライヤーが登場した。創業者ジェームズ・ダイソンさんも思わず力んじゃうほどの力作だ。実際に某プレゼンの天才なら『ヘアドライヤーを再発明した』と言っちゃうんじゃないかと思うほど、革新的なヘアドライヤーだ。

私の目線から見て、ダイソンのヘアドライヤー『dyson supersonic』が優れている技術的なポイント(たくさんあるとは思うが、特に重要なの)は3つあると思う。

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ひとつは、お得意の流体力学的なアプローチで、コンパクトなボディーから大きな風量を生んでいること。あの扇風機のリクツは以前詳しく解説したが(『ダイソンの扇風機のリクツ #dysonjp』)簡単に言うと、細いリップを通すことで風の流速を上げる(いわゆる)→板面に沿わせることで、粘性抵抗から切り離す→流速の速い空気と触れたワッカの内側の空気が、いっしょに巻き込まれて前に流れる→外側の空気も巻き込まれる……という構造で、小さい構造から大きな風を生み出しているのだ。

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ダイソンのいわゆる扇風機の風を体験すると分るのだが、通常の扇風機やエアコンの風にあるような空気の脈動感、むらというのがなくて、大きな空気のカタマリ、流れができる。それはこの風の作りか方に理由があるのだ。

2つ目が本機の特長というか、けっこうキモになる部分。

その風を起すファンとモーターをグリップに内蔵。なんと、11万rpmという高速で回しているということだ。

モーターをグリップに内蔵したのは、おそらく持って動かした時の慣性モーメントの小ささを実現たかったのが一番の理由だと思う。女性の細腕で長時間振り回すことが多いものだから、ハンマーのように先端に重みがあるより、手の中に重みがあった方がいいのは当然だ。バイクのエンジンのクランク軸が運動の中心いあったり、クルマだとミッドシップカーが優れて要るのと同じリクツ。運動するのもは、運動の中心に重心があった方がいい。

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が、同時にそれなりに細いグリップの中に、十分な風量(と風速)を起すモーターとインペラを内蔵しようとすると、かなり細く小さなサイズの筒の中でそれを実現しなければならない。ある意味、大きなファンを作るより不利なのだ。

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それをお得意のデジタルモーターの技術を活かして小型、高回転化したってことだと思う。詳細は取材してないけど、ドローンに使うようなアウターロータータイプ(カンが回るタイプ)はトルクを発生するけど、回転は上げられない。多分、インナーロータータイプのしかもDCモーターで、回転数を上げるのに適したもの作ったんだと思う。

11万rpmもの回転で回るインペラーはアルミ切削加工で作られている。かなり精密なバランスがないとブレてしまって振動が出て、ノイズの原因になってしまう。おそらくプラでは作れなかったのだろう。削り出してから、バランスの計測をすると言っていた。場合によってはさらに修正してバランス取りしたりするのかもしれない。

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まぁ、ピストンがあるレシプロエンジンの回転数とはわけが違うのだけど、それでも11万回転はすごい。小型のラジコンエンジンも、こういうタービンブレードを備えて20万rpm回ったりするが、バランスが良くて、効率が良くて、しかもノイズを出さないブレード形状など、やはりここもダイソンならではのテクノロジーが活きるポイントだと思う。

ダイソンさん登場の時の背景が、ジェット機のタービンブレードだったんだから、やっぱりかなりそういう技術を意識しているんだろうと思う(名前もsupersonicだし)。

ジェットといえばブレードの素材がインコネルだったりしたら、技術ヲタの人は萌えたりするんだろうなぁ、と思ったけど、どうも普通のアルミっぽい。そりゃそうだ(アルミなのか、ジュラなのかそのへんも聞いてない(←取材不足)。7075なのかな、そこまででなくても小さいから大丈夫なのかな)。

さて、話が逸れまくったけど、3つめの技術的ポイントが、ガラス球サーミスタ(温度センサー)による毎秒20回もの温度測定。だから、風量を落としても風が熱くなり過ぎたりしない。風量を変えても、常に風の温度は設定した状態にある。

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温度はボタンで、28度(というか多分暖めてない状態)と、45℃、62℃、78℃に設定できる。78℃でも熱い感じではないのだが、それがポイントっぽい。

高温のドライヤーが、髪の毛の内部の水分を破裂させ、それが色ツヤのない髪の原因となっているのだそうだ。つまり、dyson supersonicは高温にならないから、髪の毛を傷めない。しかし、風量があるから十分に髪の毛は乾く……ということだそうだ。

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さて、復習するとポイントは

1.扇風機と同じAir Multiplierによる大風量。
2.11万rpmを実現した小径モーターと、13枚ブレードのインペラ
3.温度制御

……ということになるのだけれど、実は一番すごいのは、その技術が、『ドライヤーを使っている人をハッピーにする』という一点にフォーカスして使われているということにあると思う。

大風量で早く乾く。やわらかい大きなボリュームの風(これは体験してみて下さい)で、快適に髪を乾かすことができる。グリップに重心があって疲れない。温度制御が正確で髪の毛を傷めず、髪の色ツヤに貢献する……など、すべての技術は使う人をシアワセにしている。

馬力があり過ぎて乗り難いクルマとか、技術的に尖ってるけど便利ではないパソコンやスマホ……と違って、すべてがユーザーベネフィットに繋がっているのだ。

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さらに、その商品を売るためのズバ抜けて優れたマーケティングがある。5000万ポンド(95億円)もの開発費をかけられるのは、そこにマーケットがあるという点を十分に調査しているから。

4万8600円(税込・直販限定のレザーボックス付きは5万9400円)は、私のように髪の毛が心もとなくなってドライヤーがなくてもすぐに乾燥してしまう人間にとってはとてつもなく高価に感じるが、毎日長い時間を髪の毛を乾かすことや、ブローに費やす人にとってはそうでもないかもしれない。

美しい髪を維持するために必要なら……女性がファッションやアクセサリー、化粧品に費やすコストのことを考えると決して高価なものではないだろう。

また、美容室で使う業務用のケーブルの長いモデルも用意されるということなので、まずはプロフェッショナルから普及するのかも。カリスマ美容師がこのアイコニックなドライヤーを使いながら「早く乾くし、髪の毛を傷めず色ツヤが良くなるんですよ」なんて言ったりしたら、そりゃあ欲しくなるだろう。

高い技術力と、それを人のベネフィットに結びつけるコンセプトの確かさ、高いマーケティング能力……ダイソンの家電での進撃はさらに続いていきそうだ。






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  • 村上タクタ

    村上琢太。ガジェット好きの雑誌屋。'92年入社以来趣味誌ひと筋。バイク雑誌RIDERS CLUBから、現在はコーラルフィッシュRCエアワールドの編集長も務める。機能を突き詰めてカッコよくなったガジェットと、アイデアと楽しさに満ちたウェブサービスを紹介する本『フリック!』の編集活動に奮闘中。twitterアカウントは@flick_mag

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