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2015年5月29日 (金)

将来、照明はすべてダイソン製になるかもしれない【ダイソン・アリエル】

ヒートパイプと超高集積LEDがもたらす革命


本日、ダイソンから、ジェイク・ダイソン・ライトの新製品が発表された。その製品は、イギリスの最初の人工衛星にちなんでアリエル(Ariel)と名付けられた。

この製品に、秘められたテクノロジーは、照明に関する根本的問題の大半を解決しそうだし、そうなると将来的にあらゆる照明はダイソンのテクノロジーまたはその亜流となってしまうかもしれないほどの技術だ。

その革命的な技術とは、ヒートパイプを使った冷却によって、超集積されたLEDの実装を実現すること。

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ちなみに、人工衛星アリエルは直接的な太陽光で高温に達するボディの冷却にヒートパイプを使っていたのだという。

なんと、200個もの微細なLEDが、(イギリスの)10セントコインほどのサイズの中に集積されており、トータルで70〜100wの出力を持つというのだ(ここで言う100wは明るさではなく消費電力。一般で言われる電球相当の表現でいうと、おそらく明るさは白熱電球の数百w相当、ひょっとすると1000w以上と思われる……後述するが、あまりこの表現に意味はない)。

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ちなみに、LEDチップはLEDの世界では圧倒的にクオリティが高いと言われる米国のCree社製。この光源の光を、ロスすることなくまんべんなく拡散する非常に複雑な曲面を持ったレンズは特殊な樹脂製だという。

LEDのテクノロジーの問題は『熱』にある。


一般的な1wや3wのチップでさえ、使用し続けると猛烈な熱を発生する。そして、その熱は永遠の寿命を持つかのように言われるLEDチップを意外と早く破壊する。また色温度もおかしくしてしまう。

ゆえに、LED照明になると、この複数の1wや3wのチップ、なるべく空気に触れる面を増やすようにしたフィンを一杯持つヒートシンク的なものが装備される。大きな照明になると電動ファンまで使って冷却することになると思う。しかし、それでもLEDチップが過熱するという根本的な問題は変わらない。

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ジェイク・ダイソン・ライトがアリエルで使っている技術は、この超集積したLEDチップ(COD=チップ・オン・ボードと言うらしい)で発生する熱を直接組み付けた6本のヒートパイプで即座にボディ全体に伝えて発散するというものだ。

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ヒートパイプは銅製で内部は真空になっており、中に1滴の水が入っている。一端に熱が加わると水はパイプの中で蒸発し、熱くない部分で凝集して熱を伝える。実際に、取材時にはヒートパイプの一端を持って熱湯に浸す体験が提供されたが、数秒で熱くて持てなくなるほどの熱の伝導が体感できた。この能力を使って超集積されたLEDチップの熱を拡散するのだ。

Dsc02795(熱された赤い水の方にヒートパイプを浸して、数秒で熱くなるのを感じて「おお〜っ!」という当たり前のリアクションをする各メディアのみなさん。ちなみに、私も同じリアクションをしてしまいましたw)

これによって、信じられないほどの集積度合いを実現しながらも、LEDチップの温度を50度ていどに保つことができるのだという。

これは、控えめに言っても照明の革命だ。消費電力が少なく、コンパクトで形状の自由度が高いLEDライトは近い内に、白熱灯や蛍光灯を駆逐していくのは間違いないが、その最大の障壁は高温により高集積化が難しい、明るくすると熱が発する、そしてその熱で自壊する……という点にあったのだが、ジェイク・ダイソン・ライトはヒートパイプと組み合せることで、その問題を根本的に解決してしまっているのだ。

一般に販売されている家電製品としてのLEDライトが『長寿命』と言われる割に、意外と早く壊れるのは灯具によっては熱がこもるからだ。ジェイク・ダイソン・ライトは動作温度を50度前後以下に保つことで、18万時間もの動作時間を実現しているという。これは1日12時間点灯しても、37年間利用できるという寿命の長さだ。

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ちなみに、このアリエルは最大出力時で9000ルーメンという明るさを持ち、8人程度が座る大きなテーブルのある会議室や、ワークスペース、自宅なら、アイランドキッチンやダイニングテーブルなどに最適だという。また、ダウンライトタイプだけでなく、天井を照らし、反射光として室内をてらす間接照明のアップライトタイプもラインナップされる。

……が、日本での発売についての詳細はまた未定。B to Bを意識しているとの発言があったので、おそらく当初はオフィスや店舗などでの使用が見込まれているのだろう。ただ、先に発売されている、LEDタスクライト・シーシス(CSYS)にも、このヒートパイプテクノロジーが使われているのかと思うと、その性能にもがぜん興味が湧いてくる。高温にならず、非常な長寿命を実現しているというのは、このテクノロジーが背景にあったのだ。ちなみに、CSYSの明るさは560ルーメン。

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ダイソン親子に通じるもの


さて、ジェイク・ダイソン・ライト率いるジェイク・ダイソンは、かのジェイムズ・ダイソンの息子。そして、そのテクノロジーを追求し、高品位な製品を開発する姿勢を受け継ぎながらも、別会社としてジェイク・ダイソン・ライトを運営してきていた。そして、先頃父親のジェームズ・ダイソン率いるダイソンの傘下にはいった。これにより、ジェイク・ダイソン・ライトはダイソンで販売されるようになり、今後ジェイク・ダイソンはダイソンの他の製品の研究開発にも携わって行くことになるという。ジェームズ・ダイソンはこれを実現するために3年も前から、ジェイク・ダイソン・ライトにラブコールを送っていたのだという。

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もうひとつ、興味深いことがある。このアリエルの色温度は4000K(ケルビン)、シーシスの色温度は2700Kだというのだ。

これはLEDライトの一般的な常識からするとかなり低い。簡単にいうと、暖かい光だということだ。昼光色が5500Kあたり、昼白色が6500Kあたりということを考えると、これはかなり偏った設定だ。

一般にオフィスなどの照明は蛍光灯だし、LEDにしても正確な色再現性を求めて5500Kなどに設定されているものが多いと思う。ジェイク氏にちょっと聞いてみたが、ものを正確に見るための色よりも暖かみのある色、心を落ち着かせる色を表現しようとしているとのことだった(ちなみに、雑誌社などの天井のライトは色校正などを正確に見るため5000Kが望ましいとされている)。技術を重んじながら、その技術を人の快適さのために使おうという姿勢は、ジェームズ・ダイソン氏に通じるものを感じて安心した。

おまけ:


ちなみに、光の明るさについては表現が難しいんですよね。一般に言われるW(ワット)は、消費電力の量でしかないし、「●●W相当」とかかれている場合は、わかりやすいように白熱灯の電球にたとえて説明しているだけ。光源の明るさについてはルーメンで表現されるんだけど、それを360°全方向に照射するか、反射板やレンズで集めて照射するかで全然明るさは違う。単位面積あたりに照射する明るさはルクスで表現するんだけど、これは当然距離によって全然変わってくるんですよね。というわけで、光源の明るさと、そこから一定の距離におかれた紙がどのぐらいの明るさで照らされるかは全然違う問題だし、それを分かりやすく表記するのって、とても難しいんですよ……。

コメント

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  • 村上タクタ

    村上琢太。ガジェット好きの雑誌屋。'92年入社以来趣味誌ひと筋。バイク雑誌RIDERS CLUBから、現在はコーラルフィッシュRCエアワールドの編集長も務める。機能を突き詰めてカッコよくなったガジェットと、アイデアと楽しさに満ちたウェブサービスを紹介する本『フリック!』の編集活動に奮闘中。twitterアカウントは@flick_mag

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