デジタルガジェットとウェブサービスに関する最新ニュースを、電子雑誌『フリック!デジタル』と連携してお届け! [ Flick! 毎月20日発売 ]

« 初めてiPhoneを買った方のための本、作りました。 | メイン | 『iPhoneの基本』発売です »

2013年11月23日 (土)

SIMフリーiPhone発売でどうなるのか?

SIMフリーiPhoneが発売された、価格は?

昨夜突然、SIMフリーのiPhoneが発売された。これまで海外などで入手するか、少し怪しげなサイトで入手するしかなかったSIMフリーのiPhoneが、公然とネットのAppleストアで発売されたのだから、これはびっくり。

Iphone_5s__iphone_5s__apple_store__Iphone_5c__iphone_5c__apple_store_2


価格は、以下の通り。

Pages_1
これは、高いのか、安いのか? 得なのか、損なのか?

この代金さえ払えばiPhoneを入手できて、回線を使う、使わないの自由が得られるというのは、うれしい話だ。日本はこれまでかなり強固にSIMロック側にいたのだが、いきなりオープンになったということで、まずはユーザーとして喜ばしい。

しかし、これは得なんだろうか? ちなみに、我々が2年契約で2年間の間にiPhoneに対して支払う金額はだいたいこんな感じ……。

Pages
これは、ドコモで新規のiPhoneを購入した場合。MNPならもう少し安いし、同キャリアの機種変ならもう少し高い。また、キャンペーンなどでこのもう少しお得に買えるケースがあるのはご存じの通り。通話すればこれにプラスして通話料がかかる。

もちろん、これには通信費の定額代金も含まれている。この数字から、さっきのSIMフリーiPhoneの代金を差し引いて、さらに月額の差額を出すために24で割るとこんな感じ。

Pages_2
つまり、3570〜3250円以下の金額で、月額通信費が済むなら、SIMフリーiPhoneの方がお得ということになる。しかし、ご存じのように、キャリアのパケット定額の料金は5000〜7500円。つまり、SIMが縛られたiPhoneと、通信料をセットでキャリアから購入した方がはるかにお得。通常の人にとってSIMフリー端末のメリットは少ないことになる。


SIMフリーiPhoneはどういう人に役立つのか?

では、SIMフリーiPhoneはどういう人にとって必要なのか? いくつか考えてみよう。

海外生活の多い人
まず、あたり前だが、海外生活成分の多い人。もちろん海外から来て、一定期間だけ日本にいる人。日本にいる間だけ有効なSIMや、従量制のSIMカードをMVNO(仮想移動体通信事業者……と言うと余計わからないけど(笑)日本通信などの、回線を大キャリアから借りて、それを別のカタチのパッケージで通信サービスとして展開する事業者)などのSIMカードで使えばいい。で、海外ではその国のプリペイドSIMを使えばいい。

毎年iPhoneを買い替える人
私のように、毎年買い替えるタイプの人は、2年目iPhoneだけSIMフリーで買って、SIMだけ挿せばいい。iPhone単体は安くで手に入るのだから、2台持ち(もしくはそれ以上)になって、意味なくiPhoneを複数持ちしている人にとって、これはかなりメリットが大きい。(とはいえ、私は2年目の電話は妻に使ってもらっているからこうはしないが)。

通信料を極端に節約したい人
ほぼWi-Fi運用の電話付きiPod Touchのようにして、通信費を節約することはできる。ただし、前述のようにそれほどコストメリットがあるわけではないから、かなり極端な使い方としないとコストメリットはでない。うっかりすると、こっちの方が高く付く可能性もなきにしもあらずなので、あまりお勧めしない。自分でデータ料の概念などがよ〜く分かっている人がそうやって使う分には可能かもしれないが、自由に通信できないiPhoneなんて、iPhoneじゃないと思うので、ほんと、お勧めしない。

子供や、高齢の親に、使い終ったiPhoneの利用
SIMフリーであれば、自分が使わなくなったiPhoneの利用方法として、子供や高齢の親に渡すという使い方はアリかもしれない。仕事にも使い日常にも使う一般社会人だと、デメリットも多いが、たとえば、子供であれば音声通話を組み合せた300KbpsのSIMを挿して渡して、基本通話用、Wi-Fiのあるところなら快適に使えて、戸外ではなんとかデータ通信ができる(地図が見られて、メッセージサービスができれば十分という割り切りかたも)という使いかたあアリかもしれない。高齢の親にiPhoneを渡しておくのも定額SIMであれば便利かも。実家の親に、2GB規制のSIMを挿して渡し、フォトストリームを同期して、子供たちの写真を見てもらうビュアーとして使う手もある。

こんなところだろうか? 考えてみると、我々的にすぐに役立つことは少ないんだけど……逆に手元にある古いiPhoneがSIMフリーだったらよかったのに……という気もするw


SIMフリーiPhone登場は何を意味するのか?

そもそも、SIMロックとは何のためにあったのか? たとえば、SoftBankで買ったiPhoneをすぐに他のSIMを挿して使われては商売あがったりだからだ。日本の場合、通信費と端末代が不可分にからみあっていて、端末代が無料なわけはないのに、それを通信費に転嫁して『端末0円』と称するビジネスがまかり通っている。だが、実際には0円ではないから、『通信費』という名目で、端末代金を回収しなければならない。だからSIMロックというクビキに繋がれなければならなかったわけだ。

しかし、iPhoneをauも、ドコモも売るようになって、事実上、SIMロックの意味はなくなった(それにして、最低限の取り扱い台数など過酷な条件を呑んでやっとiPhoneの販売権を手に入れたドコモはいい面の皮すぎる。そんな条件を呑んだのに、もう誰でも扱えるようになってしまったんだから……)。ならばSIMフリーで売ったって問題はあるまい……という道理だと思う。

さて、そもそも、なぜ、日本のキャリアはiPhone=スマホの日本上陸を嫌がったか(明らかに最初ドコモは嫌がった。日本にスマホが入ってくる前に、本当はBlackBerryなどでやったように、高価なパケット料を課して『ね、iPhoneは使えないでしょ?』ということで、上陸を阻止したかったハズだ。そしてデメリットがあることを分かっていながら、SoftBankはドコモに対抗するために、このリンゴを食べたのだ)。それまでの、携帯電話事業者のビジネスはわる意味独占市場で、端末はメーカーに専用のものを供給させ、通話料をとり、パケット料を取り、さらにi-modeなどのコントロールされた市場でアプリやコンテンツを売ることができた。すべてはキャリアのコントロール下にあったのだ。

しかし、iPhoneは(我々にとって明らかなように)通信回線を持った小型携帯用コンピュータだ。思想としてオープンなインターネットから、コンテンツを取得することができる(それを上手くコントロールしてAppleに利益をもたらしているのが、App Storeの独占と、それに連なる音楽、映像などコンテンツ市場の独占だが)。広大なインターネットが、個人が持つiPhoneに接続されるなら、間にあるキャリアは土管にならざるを得ない。

すべてを持っていたキャリアは、iPhoneの登場と、最終的にそれが3キャリアに行き渡ったことで(行き渡るとiPhoneを持っていること自体は武器ではなくなるので)、昔から怖れていた土管に成り果ててしまった。土管に要求されるのは、高速性と、安定性と、低価格だけだ。そこには独占市場だった頃とは違う、過酷な競争だけがある。

iPhoneがフリーでパーソナルなインターネットを僕らのもとに持ってきてくれて、それはそれでうれしいことだけれども、結局のところAppleはこのSIMフリーiPhoneの登場をもって、日本の携帯電話市場の開国を成し遂げてしまっただけで、Appleファンの我々にしたってさすがに、収益がAppleだけに流れて行って、日本の通信事業者が疲弊していくことには不安を感じざるを得ない……。誰もが急にSIMフリーiPhoneを買うわけじゃないんで、急激な変化にはならないと思うが、起こっているのはそういうことだ。

海外に長期滞在する人には朗報。あとは、iPadもSIMフリーにしてくれるとありがたい。この調子ではきっと遠からずそうなるんだろうけれど、iPadこそ自由な通信コストで運用したい。しばらくMVNO事業者にとってはバブルな時代が来るのだろうか? 日本通信の株が急騰したり、MVNO事業者が乱立したりするのだろうか? といっても、3キャリアが、2GB従量SIMや、300kbps限定SIMなど多彩な料金制を打ち出してきたら、バブルも急速冷凍されるだろうから、あまり踊り過ぎるのも危険かもしれないけど。

いや、いろいろ移り変りが多過ぎるので、理解しようとするだけでも大変です。

(タクタ)

コメント

コメントを投稿

flick_twitter+facebook



このチームが作っている本のブログ

  • 【このチームが作っている
    本のブログ】




flick! editors

  • 村上タクタ

    村上琢太。ガジェット好きの雑誌屋。'92年入社以来趣味誌ひと筋。バイク雑誌RIDERS CLUBから、現在はコーラルフィッシュRCエアワールドの編集長も務める。機能を突き詰めてカッコよくなったガジェットと、アイデアと楽しさに満ちたウェブサービスを紹介する本『フリック!』の編集活動に奮闘中。twitterアカウントは@flick_mag

flickの広告バナー